仙と島野と神懸り

いやっは、長〜いプロ野球シーズンがようやく終わった。ヒマだったお陰で、今年はいっぱい観たなあ中継。残念ながらトラの日本一は叶いませんでしたが、堪能はしました。当欄でも、阪神ネタを結構続けてしまったので、ケジメという意味で、今回も一本アゲさせていただくことにしました。こんなローカルな場所でこそ、全編「タラレバ」尽くしで、ぼやきまくりゃいいんですが、まあ、それほど悪い余韻も残ってないし、アッサリと感想をつぶやいときますわ。


2003年日本シリーズは阪神タイガースvs福岡ダイエーホークス、日本一はダイエー。

 トラタカ日本シリーズ、マスコミ・外野はトラ有利、なんて声が多かったんですが、これは期待票。蓋が開いた1,2戦を観れば、実力差は歴然。普通に進めば4勝1敗でダイエー、というところでしたようで。それを7戦まで引っ張ったのが、春の甲子園に滞在なさった「勝ち神さま」が、どれ、その後の首尾でもみてやるかと、3戦目にふらり甲子園に立ち寄られたお陰のような具合ですな。春先の阪神の、連打連打逆転ビッグイニング、あれ「神懸って」ましたもん。ノムラ前監督の名言、「敗けに不思議な敗け無し」を裏返すと、勝ちには不可解な要素は多分に存在するということであり、それをあたしは「神懸り」と表現したいわけなんすが、一度二度ならず、連日連夜の甲子園で不可解な勝ちが続き、それが普通であるような錯覚に陥るという、勝ち慣れていない虎党にとっては、まさにドラッグ服用のような恍惚感に浸されたのでありました。

 死のロード開始と同時に、勝ち神さまは、「もうこんなもんで十分やろ」と天界にお帰りになりまして、いきなりいつもの「ダメ虎」に戻っているのにもかかわらず、そこは「慣性の法則」。監督コーチ選手ファンはいままでの不可解な勝ちが錯覚であることに気づかない、いや、気づきたくない、という部分もありまして、首を傾げつつも調子の波が戻ってくるのを待つような按配でした。まずいことにロード終了後の読売戦で、連勝してしまいましたので、また勘違いが増幅されてしまいました。このときは神様は不在だったと思いますが、まあ普通のシーズンでも、こういう勝ちは一度くらいはありますから、タマタマそれが、ここに嵌まったんですな。このあたりの「神懸り」の流れはドラゴンズ戦のみをたどっていけば一番明快です。春先の頃は、勝ったり敗けたりでしたが、オールスターの前頃は、無類の強さでほとんど捻り潰しました(実は神様が…)。後半に入ると、あれあれ、こんなはずじゃなかった、とジリ貧敗け。終盤に至っては、ちょっと歯が立たないくらいのていたらくでした。敗ける気がしなかった読売にもポロポロと…。でも誰も、これが真の実力だとは思いません。だってクスリ効いてますもん。

野球よりシナリオ・演出家としての才が際立つ星野監督と名参謀島野育夫の合体力

 しかし指揮官たるもの、ツキには乗って流れを引き寄せねばなりません。あたしには、星野監督って、野球の戦略・戦術家と言うよりも、シナリオライター・演出家の才が際立って感じられます。勝ち神さまにいただいて貯えた膨大な貯金がある。これを資本にして、優勝へのシナリオ書きと感動の演出のほうに軸足を移した采配が始まりました。また、これが元に戻った「ダメ虎」の浪花節的流れに上手くハマりました。それが象徴的だったのは、ビジターでは全然勝てず、甲子園で胴上げ、という運びでした。甲子園に強い、とは言っても、春のような横綱相撲はできず、ギリギリのやっとこさ勝ちなんですが、麻薬はまだ効いておりまして、勘違いが入っております。そのままナントナクひと月のブランクを経て、日本シリーズを迎えたという…。どことなく斜陽が射し込んでいる趣が、各選手の佇まいにも写しだされていましたな。

 繋ぐ攻撃がウリの今年の阪神でしたが、単打が繋がって大量点というのは、まことに運に左右されるものでありまして、そうそう続けられるものじゃない。そこにやはり「大砲」がいてこそ効率良く得点できるものであります。85年の日本一は、バース掛布岡田真弓の長距離砲に長崎等の強力代打陣、機動力の吉竹、小技の広田の面子が揃い、で投手陣はイマイチという、なんや今回のダイエーオーダーとイメージが重なるではありませんか。ところが今回のダイエー先発陣はイキの良いのが揃っているし、セ・リーグにはあまり見られないタイプの投手。なによりトラは初物に弱い伝統がある。甲子園での三連勝も、やっとこさ守りきったという勝ち方で、7戦とも圧していたのはダイエーですわ。

 その劣勢な面子で、なんとか最終戦まで引っ張ってきたのが、星野&島野プロデュースの巧みなシナリオと、甲子園をちょっと覗いてくれた勝ち神さま。もちろん、ファンの悲願の「うねり」も、神様の一員に加えてもいいでしょうが。最後の最後は実力どおり、チカラで寄り切られ、「あ〜あ」とあいなったわけですが、あなた、去年までのタイガースに比べりゃ、それでもずいぶん成長したもんです。特にダイエーとの7戦を闘ったことで、おのおのの選手が、向こうさんのソツなさ、というか、やるべき「仕事」をどうこなすか、などを目の当たりにしたわけで、かなり勉強になったのではないでしょうか。特に滑り込みで代打出場した濱中の起用法なんてのは、シリーズの勝敗よりも、今後のために経験を積ませることが目的のようでした。繋げる打線に、若き「大砲」がどっしりと育てば、ダイエーとでも、がっぷり四つ相撲がとれますからな。

 18年前は、日本一のあと急降下して定位置に納まってしまいましたが、今回の経験を上手く活かして、何とか6年に一度は優勝できるチームに成長していただきたいもんです。