地震カミナリ野次チュウシ

2004年9月5日の甲子園球場、阪神―巨人の最終戦は試合開始早々,突然の激しい雷雨で中止となった。超満員の内野スタンド通路は酸欠状態に近くなりパニック寸前。無事観客の大半が球場外に出たころあいにこんどはグラグラっと来た。さんざんな観戦だったが、スタンドの構造に危機感を憶えたのは確かだった。


ささやかな娯楽、甲子園球場アルプス席の阪神vs巨人観戦が…


▲試合開始前G練習時の甲子園。右中間後方には不気味な黒雲が…

 「弱り目に祟り目」なんつう文句があるが、ここんとこ、それにどっぷりと取り憑かれてしまっている。先日は「ぽち!」という音とともにブレーカーが降り、再び入れるも、エアコンが一向に冷えなくなってしまい、またある先日は「ぱちぱちっ!」という音とともに、永年使ってきた21インチCRTがご臨終と相成った。自棄糞で検めに行ったサマージャンボ宝くじのみ、おべんちゃら賞の一万円が当たっていたが、窓口のオバチャンに「おめでとうございます」と手渡された一枚の札は、その五分後には引き落とし口座のある銀行支払機に吸い込まれていった。

 そんな折、ささやかな福音が。親友のH氏が、5日の甲子園、阪神読売戦のチケットを驕ってくれたのである。三枚も戴けるというので、今夏の金欠で、どこにも連れていってやらなかったガキどもへの後ろめたさを払拭できると喜び、二人にタイガースTシャツを着せ、阪神デパートで「551の豚まん」と「観戦おつまみセット」を購入し、勇んで球場へと足を運んだ。

 5日(日)の阪神読売戦は、(10月の予備日を除くと)最後の甲子園でのゲームである。タイガースはアテネ五輪に世間が注視しているドサクサに紛れて、弱小下位球団にこっそり8連勝し、スポーツ好きの視線が戻ってきた頃合いに、立て続けに上位に4連敗するという、ま、例年通りの「らしさ」を醸し出しているのであったが、大連勝を折り返した後に連勝数プラス1の数だけ連敗するのは、昔から経験させられてきて免疫があるのである。折角の甲子園観戦時の連勝記録が途切れるのは残念だが、ストにも突入しそうな按配だし、ま、ありがたく観ておこうと、三塁側アルプス席上段までの長い階段を登って席に着いた。

プレイボール〜即、雷雨〜2回降雨ノーゲーム〜チケット払い戻し〜地震

 立て続けに通過する大型台風が持ち込んできた湿気のせいか、スタンドは異様に蒸し暑かったが、なんとか雨は落ちていない。夕立の通り雨程度は覚悟はしていたけれど、こんなトンデモないことになる予想はしていなかった。先発は頼りな左腕の三東であるが、初回、仁志にあわやサク越えの当たりをされたもののなんとか切り抜け、その裏、イマオカ君のソロアーチが出て、こりゃ今日はいけるかも、と淡い期待を抱かせたその頃。ポツリ、ポツリ、と雨が落ちてきた。読売の攻撃になったので、ここは喫煙所モニタで三東の球筋でも確認して一服と、ガキどもをスタンドに残し、通路内に入った途端、「バリバリ、ドシャー!」っと猛雨。
 
 どやどやとスタンドの五万三千人が雨宿りに通路になだれ込んできて、あたしは女子便所内に押し込まれてしまい、身動きすらできず。喜んでいる余裕など無かった。外にいるガキどもが心配になったので、座席のH氏にケータイで連絡をとるが、人で全く動けないとのこと。スタンドから人が逃げ込んでくるが、通路に犇めいているのは雨宿りの一時退避組なので一向に動こうとはしないのである。そのうち通路の湿度温度は酸欠に近くなるほど上昇し、雨には濡れないぶん大汗が吹き出てびしょ濡れになった。ロシアの小学校体育館の状況を実感しながら、事態が動くのを待つほかはなかった。

 豪雨は降り続いていたので、球場は異例の早さで中止の判断を出した。「2回降雨ノーゲーム」この中止の発表を受け、怒号とともにようやく通路内の観客が出口へチケット払い戻しに向かいだした。人に流れが生じたので、なんとか移動が可能になったのだが、その時思ったのは、満員の甲子園が火事や大地震に遭遇したら、目も当てられないほどの死者が出るのは必定、とのことである。濡れ鼠のガキどもと合流したが、「551の豚まん」も「観戦おつまみセット」もロクに箸をつけないまま、びしょ濡れになってしまいオジャンだ。とにかく球場外に出ようと、密集の階段を一歩ずつ下って外に出たら、あら、雨はカラリと上がっている。「あはは、もう五分待てば、試合再開できたのに。球団も大損やな」と言いつつ一服つけていたら、「ユサユサユサ」と不気味な横揺れ。この地震がもう 10分早く起きていれば、あの五万三千人が身動き取れずに犇めいていた通路は、どんなパニック地獄になっていたか想像できない。ま、ここにいるほとんどの観客は10年前のトラウマを抱えているのであろうが。

 報道だけに接すると、イマオカ「幻の」ホームラン、てな記事で片づけられているのだが、あの地震(一回目)がもっとデカくて、もう10分早く起きていたら。もしくは中止の決定がもう少し遅れていたら。少なくとも怪我人が発生していたことだけは間違いない。全く、ツイているのやら不運なのやら、サッパリ解らない。と書いてたら、ええっ!おお今またエライ揺れだしたぞ。こらアカンちょっと水槽を押えに行ってき…