ヒゲフェチ?

いろいろ試した結果、電気シェーバー本体はコンビニやホームセンターで売られている千円(単三電池二本使用、二枚刃/水洗可)程度のものに落ち着いた。高価なものは刃先や回転方法にさまざまな工夫がされているのだが、いかんせんデカくて重い。それにヒゲカスで汚れるし、刃は消耗品なので交換にも製品相応の出費がかかる。というわけで、常に「真新しい」千円シェーバーを二三台揃えておき、自分の落ち着く場所それぞれに配置して使うのが合理的だ。

電気シェーバーのヒゲ剃り行為に嵌まる。

 最近、自分のヒゲが気になって仕方がない。ま、ハゲも気になるが、こっちのほうはもはや「どうになとなれ!」と思っているので、あまり気にならないし、実害もない。ところが、ヒゲのほうは、仕事の手(マウス操作)を止めることになり、多大な時間的経済的損失を生じているから、困っている。このヒゲというのは、生やしている「髭」ではなくて、生えてくる「無精ヒゲ」のほうである。今、忙しくて、朝と夜の区別もつかない24時間が切れ目無く続いているのだけれど、あたしの場合の忙しいというのは、とにかくパソコンに向かってのべつまくなし、なんやかやマウスを動かしキーボードを叩いていなければならないのである。とは言え、次にやるべき作業が決まるまでは、画面をみつめながら考えを纏めようとする時間がある。そのとき、「ウーン、マンダム」とやってしまうと、これでもう一巻の終わり。嵌まる。

 ついさきほど電気カミソリで奇麗に剃り落としたはずの、ツルツルの肌であるはずなのに、指先にかすかであるが、新たに生えだしたヒゲの先端をチクチクと感じる。こうなるともはや駄目である。シェーバーで、その先端の触感が皆無になるまで、剃り落とさないと気が済まなくなってしまったのである。ところが、いくら繰り返し刃を当てようが、完全には剃れていないですよ!という、「チリチリ」という音が生じ、そうなると仕事もそっちのけで、ヒゲ露頭完全消滅作戦指令が発動され、ガダルカナル島攻防戦のような泥沼に陥ってしまう。一旦嵌まってしまうと、短くて30分、長くなると 1時間半くらい、パソコンの前でヒゲを剃りっぱなしということにあいなってしまうのだ。それだけコレデモカ!と剃っても、顎のどこかしろかで、「チリチリ…」と、あざ笑うような音がたつ。

ヒゲ剃り時間を労災認定してほしい(笑)

 充電式ではなく乾電池式のシェーバーで、このなんとも馬鹿馬鹿しい無駄な時間に終止符を打とうと考えた。あたしは貧乏性であるので、電池が勿体ないと思えば、剃るのを諦めるだろうと思ったのだが、駄目だった。もはや、指先にかすかに感じるヒゲがこのうえなく憎し!の状態に至り、デジカメ用の充電式ニッケル水素電池を使用しだしてしまった。これがまた持つ持つ。連続6時間くらいは回るのだ。あたしは、そう皮膚が強いほうではないので、もちろん、傍らにアフターシェーブローションを用意した。これも拙かった。仕事に没頭していても、ちらとアフターシェーブのボトルが目に入ると、反射的に「ウーン、マンダム」となり、無意識的にシェーバーのスイッチを入れてしまうのだ。

 とうとう、刃がヒゲを刈取っていくイメージまで、実に甘味なものとして増幅されてしまった。極端に言うと、自慰行為に匹敵する心地よさになってきてしまったのだ。アゴの下部を剃るときなどは、どうしても天井を見ることになる。そのときにあたしが思い浮かべているイメージは、仕事のアイデアなどではなく、アメリカの広大な麦畑を大型コンバインが舐め進んでゆく光景であり、またはシェーバーCMによくある、刃がヒゲを刈取る部分の説明用拡大CG映像なのである。これは、病気に近い。いや、もはや病気だ。仕事が進まない。労災だ。ちまたにフェチ(フェティシズム 【fetishism】)という新語があるが、このヒゲ剃り行為も異常性欲の範疇に入るのだろうか。アゴなのに「パイパン」なんて言葉が想起されたりして、それに続いて何故か白氷氷や梶原一騎までもが…と、ここまで書き進んだところで、強烈に我慢していた忍耐力がついに切れた。書くのを終了して、これより90分間程、ヒゲそり行為を営ませていただくことにする。