夢のはなし&短ぼや

悪性リンパ腫を煩い、今のあたしの齢よりも若くして亡くなった親父が夢枕に立ち、五千万ほど残してあるはずだと告げた。すわ,大変!タンスは縁の下は通帳は、と蒸気機関車のドレンのような鼻息を出したのが、2004年12月に見た夢の話。夢日記に記録した後、いちおうは実家に帰り、それとなく探してみたりして…はい、今でも貧乏です。

おかしいなあ。儂、たしか五千万ほど残したある筈なんやけどなあ…(亡父)

 いそがしいときは「短ぼや」で御茶濁し。もっとも今回のは「貧ぼや」だが。

 各金融機関にオアシを追加しとかないとライフラインが止められてしまう。電気ガスなしの年越なんて薄ら寒い事態は御免被りたいので、あちらのをこちらにこの定期を限界まで赤にして、などと調整しつつ回り、来月は一体どうすんだヨオとため息つきつつ帰った後、溜まりに溜まった帳簿を一刻半(約三時間)ほどかかって片付けた。徹夜明けだったので、ちとひと休みと横になったのだが…と、ここまでは現の話。


 ここからは夢の話である。


 横になってうつらうつらしていると、蒲団の中に入ってくる男がいる。あたしの名前を呼ぶもんだから、その声で侵入者は、あたしが十八の時に癌で死んだ親父だとわかった。横を向いて寝ているあたしの背中にぴったりと擦り寄って来たが、まあ、親父なので、恐ろしくもなんともない。


あたし「骨が当たって痛いなあ、もうちょっと離れて寝てくれよ」
亡 父「ま、ええやろうがな久しぶりやし。しかしお前、えらい禿げたの」
あたし「ほっといてくれるか!徹夜明けに銀行回って疲れとるんや」
亡 父「なんや、貧乏で苦労しとるようやの」
あたし「あんたが、金も残さんと早うに逝てまうさかい、息子が苦労しとんねん」
亡 父「生命保険が入ったやろに」
あたし「あんな金額でどないせいちゅうねん。ま、保険に加入して即、癌になった手際だけは親族一同かなり評価してますが」
亡 父「そやったかなあ…」
あたし「もう、こんなとこに出てくる暇があったら、お客のところへ行って、どろどろ…息子に仕事出したってやあ〜って脅し入れてきて欲しいわほんまに」
亡 父「おかしいなあ。儂、たしか五千万ほど残したある筈なんやけどなあ…」
あたし「ええっ!どこに!!」


 目が醒めた。


 以来、おかんに電話しようかどうか、迷っているのである。

夢のはなし(痛みについて)

 夢というのは、睡眠中に見て憶えていると云う方の夢。このところ、見ないときは長期にわたって全く見ないが、見るときは連続して来る。しかしおっさんになったせいか、『夢』のある話の夢は、トンと見ることが無くなって、あまり面白いのには当たらない。

 あたしの見る夢は、その99%は総天然色で、極く稀にモノクロームやセピア調のものがある。モノクロームの夢は、内容もそれに合っている場合が多いので、テメーの頭が勝手に気を利かして演出しているのだろう。『怖い』内容の夢は、リバイバルの場合が多く、話の途中で、「あ、これはあの夢や」と分かりながら見ていることが多い。なもんで、このあと「刺される」とかいう展開が分かっているので、その直前にムリヤリ目覚めてしまうことも可能だ。

 どうせ夢だと分かっているなら、そのまま見終われば良いものを、どうしてわざわざ目覚めてしまうかというと、刺されたり切られたりすると、マジで痛いのだこれが。胸を刺されたりした場合、激痛を感じ、その痛みで目覚めるのである。それが嫌なので、ギリギリ直前まで見てから逃避することにしている。まあ、落語『皿屋敷』の弥次馬みたいなもんだ。落語みたいに、お菊さんが『十枚〜、十一枚〜』てなことにならないかと思って、一度見続けてみたことがあったが、やっぱり刺されて痛かったので、以来退散することにしている。

 夢の「痛み」に関してはこんなところだが、もう一つ不思議なことがある。それは「飲酒」のシーンだ。友人たちはあたしの酒癖が年々悪化していると指摘し、あたしもそれを認めざるを得ないのが現実なのだが、元々酒呑みだけに、夢の中にも飲酒の場面はよく登場する。ところが、夢の中ではいくら呑んでも全然酔わないのである。どう考えても泥酔して反吐をつかないはずがないような鯨飲の場面でも、夢の中のあたしは涼しい顔で呑み続けている。刺されたときには、あれほど痛いのに、あの、後頭部から奈落に引き込まれて行くような泥酔感や、二日酔いの酷い不快感が何故か夢では表現されないのだ。

 まあ、ありがたいといえばありがたいが、「それはおかしいだろ、オイ!」と夢に云いたくもなる。なもんで飲酒の夢の場合は、自然に目覚めるまで見てしまうのだけれど、ただ、この場合の問題は後からやって来る。目覚めたのちの現実の世界が、頭ガンガン、腹ピーピー、反吐ゲーゲー、ボロボロ最悪の二日酔状態だったりするのだ。悪夢だね、まったく。