'06 第1回 WBC 日本優勝!

韓国に苦しめられ米国に苦しめられ、後が無くなった予選2次リーグの「王ジャパン」に奇蹟が起った!なんとメキシコが米国に勝ったのである。2位に浮上し辛くも首の皮一枚で予選を通過した日本代表は決勝トーナメントで爆発!韓国を6-0、キューバを10-6で下して堂々の優勝!超感動した!

祝!第一回ワールド・ベースボール・クラシック、王ジャパンがみごと優勝!


▲やっぱり儂らは野球好き

 MLBが実質的胴元の興行、第一回ワールド・ベースボール・クラシックが開催され、日本の優勝で幕を閉じた。マスコミは「日本中が盛り上がった」などと報道しているが、ホントはどうなんだろう? メディアはテレビの視聴率が良ければ、すぐ盛り上がったと決めつけたがるきらいがあるので、あまりアテにはできない。日程がたまたま休日に当たったことが大きいのではないのか。特に一次リーグ、東京ドームでの日本が絡まないデーゲームのスタンドなど、もはや忘れかけていた、かつての西宮、大阪、川崎球場なんぞを思いだすお寒い入り。しかしこれは採算を重視したMLBにも責任がある。入場料を高く設定しすぎているのだ。野球の愉しさを次世代に繋ぎたいと本気で考えているのであれば、NPBも次回はこのあたりのことを胴元にキチンと意見して貰いたいものだ。


 当欄の方針上、ひねこびたぼやきから書き始めたけれど、今回の大会と日本の「世界一」で、わたしの眠っていた「野球好きの血」が予想以上に騒いだのには、われながら驚いた。直前にトリノ五輪があり、このあとサッカーのワールドカップもあるのだが、このプロ野球トップ選手が集ったチームと大会には、特別な感慨があった。ま、我々のガキの頃といえば(さすがに天覧試合のサヨナラホーマー〈※村山説ではファール〉はナマで見てないが)、学校では「おお、金だ、拾おか」とギャグを言い、学校が終わると広場に集まって草野球に興じた。あたしなんざ、運動神経も身体能力もからきし駄目で、そのうえボールが怖かったほうだからライトで8番のお荷物野郎だったが、参加しないことにはみんなと遊べない。他にもっと欲しいものがありながら、立場を維持するにはオヤジにグローブを強請らないわけにはいかないご時世だったのである。とにかく平穏なガキ生活を送るためにグローブとバットは必需品だった。幸い、テレビが家にあったので、上手く野球ができない自分を慰めるように、当時のプロ野球スタアたちのプレイを熱心に観たものだ。また「巨人の星」にしても、一徹がカージナルスからオズマを刺客に連れてくる設定になっていたように、メジャーリーグは遠大で遥かなる高みにあった。せいぜいビッグ・リーグ・ガムを噛むくらいしか接点がなかったことも事実だ。今回の高揚は、当時のそうしたものが、今も体のどこかに染み込んでいるせいなのだろう。


 期間中そこそこ仕事が忙しかったのだが、なんとかやりくりして、日本戦は全てTVで完全観戦し、他国同士の試合も数ゲーム観、日本代表選手の発言なども拾える限りはウエブで拾って読んだ。まあ、今大会の流れや詳細は皆さんご存知だろうと思うので、ここには書かないけれど、あたしの思ったことを少し書いておく。

やっぱりワシら(日本のオヤジ)は野球好き!

 「野球は下駄を履くまでわからない」という言葉がある(あたしはどちらかというと「グランドには銭が落ちとるんや!」のほうが好みだが)が、冷静に見て、今回の日本代表メンバーは、他国にも増して「勝つ」ための人選がされていたと思うので、お隣の国が僻んで揶揄しているほど、優勝がフロックだったとは思わない。予選で韓国やアメリカに躓いたのは、不運が重なったからといっても良いくらいだ。一番ワクワクしたのはそのラインナップである。たとえば決勝のスタメンを見よ。9番青木、1番川崎、2番西岡、3番イチロー。走れる左の好打者が4人並ぶこの圧倒たる期待感。しかも西岡はスイッチヒッターだ。その後に松中、多村である。なんでもできる、点の取れる打線である。お祭りのオールスターでは絶対に実現しない並びだ。いかに阪神贔屓のあたしでも、赤星、今岡はこの際不要だと思った。足のある赤星は有用だが、外野手にはパワーヒッターがもう一枚欲しい。今岡のバッティング技術は期待できるけれど、足が使えないのは大きなマイナスだし三塁の守備にもやや不安がある。辞退などもあったとは思うが、王さんの勝つためのチョイスには素晴らしいものがあった。


 アメリカが敗退したのは、そこだ。日本で言えば、清原、城島、中村を並べるようなもので、これはシーズンを通せば強いだろうが、初顔投手との一発勝負ではギャンブルに近い布陣ということになる。またベンチも簡単には動かせない。そういう意味で、松井秀と城島は優勝のためには不要だったとも言える。韓国は堅い守備力とメジャー投手のリレーで健闘したが、いかんせん層が薄かった。打線は4番のケガが響いて、2,3番しか十分に機能しなかった。日本に三連勝できなかったのは、幸運も二度までだった、ということが選手層から見ても明らかだ。まずは、一つドーム球場を建設して、オフかプレシーズンに定期的に日本との交流戦を行なうのが韓国底上げの早道だと思うがどうか。


 しかし、なんといってもイチローの存在が全てだったと思う。グラウンドやダグアウトでの態度、マスコミへの発言の一語一語に、深く聡明な戦略が感じられて驚愕した。本人は今まで孤高のイメージを表面に出し続けていたが、これも、緻密に計算された戦略であったことが、今回はっきり解った。マリナーズで常にそうであるように、チームが優勝するためには、一野手一好打者として、いかに釈迦力に頑張り、成績を残したところでどうにもならないことを熟知しているのだが、そこには言葉の壁があった。しかし今回、イチローは、どうしても「勝ちたい」のである。しかも今回は言葉の壁はない。そこで自分の立場において、チームにプラスになる効果的なことを全て実践した。グラウンド外でもしかり、というか、グラウンドの外にこそやれるべきことが多かったのである。そのひたむきさと賢さが、胸にジンと来た。これは物凄かった。物凄い人間だ。単なるアスリートの範疇ではない。ほんとにチチローの子なのか?もはや聖者だぞ。


 チーム内での自分の存在が「至高」であるのを認識したうえ、わざと荒れ、挑発し、またちゃめっ気も見せ、巧みに選手の志気を誘導し、力みをほぐした。そのうえ、指揮官である王監督の地位と人格を、高貴なものと再認識させて、チーム全体に采配に対する不要な雑念を払拭させた。自分が全打席ヒットを打っても勝つとは限らないので、他方からマイナス要因を減らしプラス部分を増幅させ、なりふり構わず、チーム全体を勝つための最適集団に変えようとした。二次リーグ敗退が濃厚となり、この策は酬われなかったかに見えたが、セミファイナル以降、それが抜群に機能したのである。優勝後の、「このチームでメジャーのシーズンを闘いたい」というコメントも、この時あの場で、彼が言えばこそ現実味が生まれてくることだし、その影響力を十分計算したうえでの発言だろう(任天堂、トヨタ、ソニー、ヤフーなんかが組んで実現してやろうよ。プロ野球はMLBのマイナーリーグでも良いじゃないか、各球団から、翌年メジャーのジャパンチームに送りだせる人数を競うのも愉しいぞ)。そのうえ国民には、単に野球に振り向かせるばかりでなく、萎えきった愛国精神を高揚させ、世界に誇れる良い国にしていこう、というメッセージさえ含まれていたのだと思うのだが、買いかぶり過ぎか。


 とにもかくにも、WBC会期中、熱い思いでずっとテレビの前にいた。無性に世界一が嬉しかった。なんだ、やっぱりあたしは、「野球好き」の「ニホンジン」だったんだ。このザマじゃ「偏屈もの」なんて言ってられないか。