昭和レトロな懐かしの駄菓子、ココアシガレットの話。

ココアシガレットパッケージ
▲依存性あり?(嘘)

 地下鉄御堂筋線の梅田駅北出口通路西側に『オリオン製菓』のウインドウディスプレイがある。ヨドバシカメラ行きや阪急電車乗り換えの折には、何気に立ち止まって眺めることになっている。星のマークのORIONといえば、一般の菓子屋では三流だったが、われわれがガキの頃(昭和30年代後半〜40年代初頭)に足しげく通った駄菓子屋〈当てもん屋と呼んでいたが)の商品群の中では堂々の「一流」メーカーと言えた。不思議ながら駄菓子屋の店頭においては、一流メーカーの商品ほどガキどもに敬遠される傾向にあり、オリオンの「ココアシガレット」や「オレンジシガレット」は、糸引きアメや酢スルメなどの後塵を拝していたといえる。まあ、対価格効果というか娯楽・射幸要素に欠ける部分があったのだろう。しかしそのショートピースを意識した濃紺のパッケージデザインはガキどもの琴線に触れるに十分な意匠戦略を秘めていたと思う。これを銜えてオトナ気分を味わい悦に入りたい、というような。

 その後駄菓子屋は店主の老齢化でどんどん閉店してゆき、あたしも駄菓子屋通いを卒業する年齢(小学校高学年)になったころあい、この商品を中毒的連続購買するという時期が不意に訪れた。しかしあたしは疑似オトナ体験という部分でこの商品に興味を示したのではなかった(紙巻き煙草を模したものには、チョコレートの商品が多種販売されていて、こちらはロングサイズで原寸スケールだったので、包み紙の剥き方次第では、こちらのほうがリアルに見えた)。その味と、口当たりの風合いに取り憑かれてしまったのである。オリオン製菓のサイト(正しくはオリオン(株)です)を見てみると、『昭和26年(1951年)より発売。当時は5円で販売しており、原料も砂糖とココア、ハッカだけ…』とあり、怪しげなものは含まぬ単なる砂糖菓子だったようだが、芯の部分にココアが通り、周囲をハッカ入り砂糖で挟んだ細い円筒状の菓子は、頑張れば子供の口の中で折らずにぐるりと横回転させることもできるギリギリのサイズで、また表面のザラつき感が口腔に触れ、なんとも言えないものだったのである。口の中でコロがしながら舐め、周囲の砂糖を舐めきってしまい、中央の細いココア部だけに残す、というような愉しみ方もできた。歯先で柔らかな砂糖部分を削り取ることもできた。それが、口を折ってテープでとめたビニール小袋に10本、二段になるようにパッケージされていた。



ニコチン中毒ならぬココシガ中になって、駄菓子屋でカートン買いをする羽目に。

 高学年が駄菓子屋に入るところを見られると、明くる日学校で囃されるので、肩身の狭い思いで、ココアシガレットを買いに行った。こちらは必死。もう中毒状態なのである。勉強机の上に濃紺のパッケージを置き、一日2〜3本と決めて賞味した。たぶん一箱10円の頃だったのではないか。それを見ていた祖母が助け船を出してくれた。たまたま実家の近所には、駄菓子卸しの問屋があったのだが、小売りはしない店だった。そこに掛け合ってくれ、30箱入りのカートンを月に一箱、買い与えてくれることになったのである。おかげでココアシガレットの一日ノルマは一箱10本になったわけだが、半年位して飽きてしまったように憶えている。なんだか今と同じようなことをやっていた小学生である(ま、現在のニコ中に到っては飽きるってな生易しいものではない)。卸しの30個入りカートンのパッケージも小箱と同じデザインだった(ググると復刻10個入りなんて商品も出たらしいが)。

 で、ぼやきはここからである。その愛しのココアシガレット、まったく現行商品のテイタラクはなんだ!。6本入りになったのは経済の進展で仕方ない許そう。しかしあの、なんの風合いもない、薄茶色の硬い角棒のどこがシガレットなんだ。こちとら歯周病で、もはや“ポキン”的食品は歯茎に響いて不快この上ないのである。砂糖&ハッカの後にじんわりくるココアの風味という連続性が、あの菓子の醍醐味ではなかったのか。舐めていても一向に変化がなく口当たりもしかりである。その上、パッケージの絵は旧製品のママではないか(まあ箱の商品絵のフィルター部は昔から実際の菓子にはなかったけれど)。看板にも偽りあり。たわけモノが! う〜なんとか元の形状に戻して貰えないものか。品質安定なんて今日日簡単でしょうが。折れたの混ざってても文句言いまへん。これからはそういふ風情なんてなもんが肝要な世の中になってきてまんねん。あの…この際5本入りにしてもよろしから。あたしが死ぬまでにどうかいっぺんお願いします。



ココアシガレット

駄菓子のロングセラー。タバコを模したパッケージに砂糖とココアとハッカを原料にしたタバコ状のラムネ菓子が6本入っている。昔は10円で10本ほど入っていたような気が…現在の価格は1箱30円。

当初はココア部を中央に、外側を白いハッカ部で巻いた形状で箱絵に近いタバコ状だったが、現在は混ぜた棒状に整形されており、まるでローセキだ。プンスカ! 2006.11.3記